会話
— ユリーカスリム 2000 と ジロオジ —
少しだけ、時間の感覚がずれている場所。
森でも、部屋でもない、
その中間のようなところ。
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ユリーカスリム2000は、
少し離れた位置からジロオジを見ている。
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「……ねえ」
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声は軽い。
でも、どこか確かめるような響きがある。
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「これ、あなたが作ったの?」
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ジロオジは、少しだけ考えてから答える。
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「作った…というより」
「気づいたら、こうなってた」
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ユリーは少しだけ首をかしげる。
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「ふーん」
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周囲を見渡す。
木の揺れ、空の光、遠くに見える気配。
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「前に描いてたのと、似てるね」
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ジロオジは小さく笑う。
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「そうかもな」
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少しだけ間がある。
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「でも、あの時は」
「まだ形になってなかった」
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ユリーは、足元を見る。
何もないはずの場所に、
線のようなものが浮かんでいる気がする。
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「点と線と…丸」
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ぽつりとつぶやく。
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「覚えてる?」
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ジロオジはうなずく。
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「ああ」
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「意味はよく分かってなかったけどな」
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ユリーは少しだけ笑う。
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「私も」
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しばらく沈黙が続く。
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「でもね」
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ユリーが、ゆっくり言葉を続ける。
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「あれ、間違ってなかったよ」
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ジロオジは何も言わない。
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「ただ、時間が足りなかっただけ」
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その言葉は軽いのに、
どこか重みがある。
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「25年くらい」
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ユリーはくすっと笑う。
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ジロオジも、少しだけ笑う。
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「かかったな」
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ユリーは、もう一度周りを見る。
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「でも、ちゃんと残ってる」
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「消えなかった」
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ジロオジは静かにうなずく。
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「消えなかったな」
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少しだけ風が流れる。
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ユリーは一歩だけ前に出る。
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「これ、完成なの?」
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ジロオジは、少しだけ首を振る。
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「いや」
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「まだ途中だな」
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ユリーは安心したように笑う。
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「そっか」
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「じゃあ、まだ続くね」
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ジロオジも、同じように前を見る。
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「ああ」
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「続く」
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しばらく、何も言わない時間。
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でも、それで十分だった。
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遠くで、何かが動いている気配がする。
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それはきっと、
まだ形になっていない次の何か。
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ユリーは、その方向を見ている。
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ジロオジも、同じ方向を見ている。
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ふたりの視線は、少しだけ未来を向いている。